OldCord〈カスタムスプール専門店〉

2021/06/30 10:51




ご覧いただきありがとうございます。



渓流でダイレクトを使用するにはわずか4グラム前後のルアーが動力となってスプール、ハンドル、ウォームギアを動かす必要があり、これは非常に大きなエネルギーとなります。


そこでスプールの重量を軽くし、少しでも必要エネルギーを減らそうと考え、軽量スプールの製作に踏み切りました。


キャスト時のフィーリングですが、重量を10グラム以下に押さえた当スプールは素材自体が軽い為、数字以上に軽快な印象を受けると思います。


そして回りだし、いわゆる初速が早く、反比例して、加速し難い為、バックラッシュせずに軽量ルアーをキャストするのに貢献します。投げれると明言は出来ませんが。

 



逆に、重い鉄スプールだと回り出しがのっしりとしており、初速が遅く、一旦回転し始めると指数的に加速します。重量のあるルアー(15グラムあたりから)ですと軽量スプールよりも純正の重さのあるスプールの方が確実に飛距離が出ます。しかし、渓流となると3〜4グラムのルアーがスプールを牽引して、かつハンドルとレベルワインドを駆動させる必要があります。


そして、高速回転を続ける20gスプールを止めるにはそれなりに大きな力が必要となり、高度なサミング技術で回転をおさえる必要があります。

この際のサミングは、バスフィッシングや渓流ベイトフィッシングの域ではなく、変態の域です。



 

さて、ダイレクトで渓流を攻略するにはいくつか方法がありますが、おそらく最も効果的なのはハンドルの最短化、軽量化では無いでしょうか。自作スプールを作っといてなんですが、ハンドルの長短こそ性能に直結します。以下で述べる駆動部の中でもっともウエイトを占めるのがハンドルだからです。単純明確です。ここを軽量かつ短小化することによって得られるメリットが大きいことは改めて言うまでもありません。

 


次に、レベルワインドですが、これも対応可能ですね。以前どこかで拝見しましたが、レベルワインダーへの穴あけ、すなわちダイエット。もちろん外観重視するのであれば背面のみの穴あけで留めておくべきでしょう。

これによりアンバサダーほど顕著な変化が現れることはないにせよ、フィーリングは良くなるはずです。





最後にスプール。問題はこいつであります。


ハンドルは取り替えにより一瞬で性能が上がりますし(ここでの性能とは渓流シーンでの軽量ルアーキャストを目的)、レベルワインダーのスリム化も背面に慎重に穴を開ければ問題はないでしょう。

しかし、スプールとなると変わってきます。考えるべきことが格段に増えます。いくら理論上拘っても、渓流に到着し、ワンキャスト目で期待を大きく裏切られることも数えきれないほどありました。こだわらずに適当に製図したものが予想外のデータを出すことだってありました。結局のところ、信じれるのは己のフィーリングのみでしょうか。(あと親指)

 


まず、スプールの形状ですが、ラングレーのスプールは内部の両端が蓋をされた、いわゆる筒状となっております。

よく計算された素晴らしい形状ではありますが、軽量ルアーキャスト時には、スプール自体を闇雲にブランキングして軽量化をするよりも、最も外側、スプールの縁部分の軽量化によってこそ最大効果が期待できます。

これには慣性モーメントの法則が関わってきますが、詳細を省くとスプールの中心部分をあえてブランキングせずに(重いままで)、外側を軽量化し、一見不釣り合いに見えるこのバランスを絶妙なところでマッチさせる時、もっとも飛距離が出る、ということです。あくまでも持論ですが。




幸い、ラングレーのスプールはブランキング加工をしてくださいとでも言わんばかりのふにゃふにゃアルミスプールですので、加工は比較的容易であります。


 

 

さて、ブランキングを終えた後に待ち受けるは外径の問題です。


当然トラウトでの使用など毛頭になかったでしょうから、純正のスプールはかなりの深溝です。

バスフィッシングと違い、たった25メートルのラインで十分な渓流シーンでこれはディスアドバンテージ以外の何者でもありません。また、ラインの放出抵抗も極限まで減らしたいところです。

外径を広げる方法は皆様其々ですが、コルクや硬化クッション材などがあげられます。ただ、コルク等で外径を広げると、極細PEが隙間に入り込む糸かみ問題が発生する可能性が出てきます(うまくやれば問題は起こらないのですが)。

 

 


そこで、純正スプールの形状を一旦頭から削除し、完全に一から設計することにしました。

詳しい形状については伏せますが、上に挙げました慣性モーメントの最小化を求めるべくスプールの外側を取っ払い、重心をスプール内部、かつシャフトの真ん中に配置することによって、全体としてを見たときに、【内重量>外重量^2】のバランスを実現させました。


当スプールの形状からも分かるように、外側の余分なぜい肉を剥ぎ取り、中心部すらもブランキングすることによってやっと全体重量9グラム。(この中心を出す行為がかなりの困難が伴うことは想像に難くないかと思います)。











渓流ではリールの性能やブランクの硬さはもちろんのこと、当日の風の強弱や雨量も検討する必要があります。



やっと3グラムを投げれる、ではだめなのです。気持ちよく投げれることが大切だと思うのです。



リールだけで決まるものではなく、ロッドの持つ能力にも大きく左右されますしね、、、


 



(ラングレー源流域フィネススプール)




カルコン使え!と声が聞こえた気がしますが、聞こえないふりをしておきます。

 

 




他にも拘った点はたくさんございますが、指が疲れてきたのでこの辺で。



OldCord

M KIMOTO